百均化粧品考

ごく普通に単なる趣味としてバレエをやっている人は、大抵舞台に立つのは年に一度の発表会くらいで、そのためにちゃんとしたメイク道具を揃えるのは少々勿体無い気がする。斯く言う私もアイカラーやチークがセットになったパレットを10年以上使っている。しかしこれは舞台用ではなくて、親戚か誰かがハワイに行った時のお土産で、普段ではどうしようもなく使えない色ばかりがヘンなデザインに配置されている。ヘンなデザインだから一度見れば忘れられないらしく、毎年誰かが「まだこれ使ってるんだね」と見るたびに笑う。まあそういう彼女も同じ丹頂チックを8年は使っている。そんな趣味バレエの状況下でまことしやかに囁かれるようになった、「メイク道具は百均で十分」の噂は本当なのか、満を持して検証するべくダイソーへ行ってきた。


●口紅
今年の私の衣装は赤い。そこでお揃いの絶対普段には使えないような赤い口紅を買ってみた。見本の中ではボルドーのような暗めの赤だったが、実物は懐かしさを覚える、子供用おもちゃのような、とにかく安っぽい明るい赤だった。長きに渡り忘れていたが、赤という色は絵の具でもなんでも値段に比例するのだ。口紅はピンクだろうとベージュだろうと赤系を基調とするバリエーションなので、この安っぽさは例えどの色を買ったとしても百均である限りは同じだろう。
●アイライナー
私はいつもペンシルを使っているが、教室的にはリキッドが主流。初めて舞台に立つ大人が毎年数名はいるので、アイラインを頼まれることが多いが正直やりたくない。今年もおそらく50歳はいってるのではないか・・・というオバサマが一人初出演を果たすが、アイラインの予約をされてしまった。子供はつるっと引けるからいいけど、自分の年齢以上の人の肌は筆を予想外の方向へ押し流し、書いたラインが皮膚に埋もれる。何度もやり直して結局、私のはペンシルなので教室の流派から逸脱することを恐れ、上から自分でリキッドで手直ししてたりする。だったら最初から是非自分で練習して欲しいもんだ。まあそれはさておき、買ったリキッドアイライナーはウォータープルーフではなかった。多分耐水性はなかったと思うが、まあこれじゃ使えない。


…と実は買ったのは二つだけ。でもこの二つは舞台用か普通の化粧品を買ったほうが私はいいと思う。しかし驚いたのは百均化粧品コーナーの充実振り。まだ百均というものが出始めたばかりの頃は、アイカラーと別に100円のケースを買わねばならなかったりしたものだけど、今はあらゆるものが便利な感じで売られている。客席で寝てるおじさんの口の中の虫歯の本数まで見えるような小さなハコでやるなら百均でもいいだろうが、私の結論としては、「メイク道具は百均で十分ではない」。発色も耐水性も舞台用にはそれなりのクオリティがある。それに舞台用のメイク道具は普通の化粧品より安いので、一年に一度しか使用頻度が無いということを差し引いても一生使えると思えば大した負担ではない。今回買った中で唯一使えそうなのは「つけまつげ用糊」、一年に一度箱を開けるといつも固まってるので、別売り100円のこいつは助かる。