高妻山(三十四座目/百)


戸隠牧場キャンプ場脇の登山者用駐車場からピストンで、と計画していたけど夏の荒天で登山道がかなり荒れていて、周回ルートを取ることになった。



5:30駐車場を出発。この山はコースタイムが長いので、十台ほど停まっていたほかの車からも日の出前から続々と登山者が出発していく。まだ薄暗い戸隠牧場の敷地内を登山道まで歩く。



ほほう馬が噛むのか。と思っていると柵の向こうから親子らしき馬が三頭、私目指してわっしょいわっしょい駆けてくる。



たてがみにひっつき虫だらけのフレンドリーなお馬が鼻を出す。そーかそーかと撫でまわすが噛まれなかったよ。噛まれるような手の出し方をしちゃいけません。



前日までの雨で道はぬかるんでいるものの、序盤は穏やかな道。帯岩経由で一不動避難小屋方面を目指す沢沿いのこの道は、前述のとおり夏に土石流にやられて一時通行止めになっていたらしい。通れるようにはしてあったものの、押し流された土石や木々に阻まれ、天気次第で今後も予断を許さない状態。岩や木々をまたいでくぐって登って下って、とにかくしんどい。



7:20、帯岩。やだこんな岩、なんか滝とかあるし絶対通りたくないわあ、と思ったらこの滝の上を通るルートだった。しかも鎖場。怖さしかない。



7:30、おっかなびっくり帯岩を通過すると氷清水。雨の影響かわんさか溢れ出ていた。寒いし全然飲みたくなかったけど、とりあえずひと口飲んでおいた。冷たくてマイルド。



8:00一不動避難小屋。道は沢沿いで急だし滝があって鎖場があって序盤でくたくたになってしまったので、ここで早くも大休止。
ここでとてもフレンドリーな70代のおっちゃんが話しかけてくる。聞けば熊本から車で旅をしてきた元山岳ガイドだとか。この先要所要所で抜いたり抜かれたり。楽しいおじさん。



避難小屋の横には携帯トイレブース。



中はこんな感じ。携帯トイレもたくさん用意されている。でもなんかなーやっぱり便座になんかつけて汚していく不届き者がいるんだよ。長いルート、ここでおしっこしておいた方が安全なんだけどやめた。そのせいでまた後半膀胱ぱんぱんでしたわ。



8:10、おにぎりを食べてから再出発。一不動。



8:25、二釈迦。



8:35、三文殊



8:55、四普賢。ここでようやく「あっこれ頭数字やん」と気づく(遅い)。



9:20、五地蔵。ここは五地蔵山の山頂になっている。



ここまでくると下層の雲を抜け、遠望が利くようになった。あのにょっきりは形的に妙高かな……



9:30、六弥勒



9:35、七薬師。このあたりは一旦斜度も緩み、展望も開けてとても気持ちよく歩くことができる。あんまり気分がいいので登山道で佇むオジサンに「いい景色ですね〜(アゲアゲ」と話しかけると、じろりと睨まれる。あっこのおっさんさっき挨拶したのに無視られた人だ…と気づき、そそくさと横を通り抜けようとしたら、唐突に指差し「富士山が見える。あれは八ヶ岳」と解説し始めた。



え〜まじっすか〜あのぎざぎざっすか〜あれがヤツですか〜と無視された恨みは忘れ去りわくわくでオジサンと絶景に見入る。ニヒルな脇役時代劇俳優みたいに口数は少ないけど、言動から察するにかなりの高妻マスターらしい。つらいのはここからだぞ、と言い残しマスターは先に行く。



10:05、八観音。



紅葉の葉もまだ残っている。高妻マスター曰く、ここ数年高妻の紅葉は遅くなり、色づきも悪いらしい。



10:25、九勢至。目の前に目指す頂がどーんと!



・・・遠いなあ。



ここから先は辛い急登。ほとんど直線で登っていく。ぬかるんだ鎖場などもあり、進めども進めども到着しない……。



11:30、十阿弥陀。ようやく稜線に出て泣きそう。ここで既に山頂を極めた高妻マスターが下りてくる。へろへろの私を見て「お疲れさん。もう頂上だ」とニヒルな笑いを残し去っていく。
……これがかっこよさか!



11:40、登頂。少し遅れて熊本のおっちゃんも到着。「この山は最後の最後が一番つらいと聞くがマジだった」とみんなが口を揃える。
いつの間にか青空も覗き気持ちの良い山頂ではあるものの、下りのしんどさを考え後ろ髪引かれる思いで下山開始。



下りは登山道崩落を受けて今年新たに正登山道として整備された、かつての点線ルートを通る。刈られたばかりの笹の茎がぬかるみにまみれてとにかくもう滑る滑る。下りもしんどさ全開の高妻山。踏み慣らされるまではこのルート大変だわ……。景色は良いんだけどさ……。



景色は、良いんだけどさ……。



15:25、下山。ぎゅう放牧中。



ちょっと高いところにある木の葉が美味しいらしく。あまりに食べにくそうだから手伝ってあげようとしたら逃げられた。牛でっかくてこわいな!


帰りはお食事もできる「戸隠神告げ温泉」へ。塩素っぽい匂いであんまり温泉感はない。お蕎麦は旨からず。でもとても人の良い女将のおばちゃんがいたのでまあいっか。