ねこ


ねこが死んで、先月で三年経った。
実感としては、遅い。まだ三年しか経っていないのかという感じ。他のあらゆる事柄はとんでもなく時間が速く流れていくのに、あのフワフワに、あのプニプニに、あのヒゲヒゲに、触れなくなった一日一日が長い。こんなに毎日、ねこに触れなくて我慢しているのに、こんなに我慢しても、まだたった三年しか経っていないのかと。


一人暮らしを始める頃、ねこを拾った。ねずみのような灰色の仔猫にねずと名付けた。その後結婚し、出産し、離婚し、再婚し、その間に4度引越しを繰り返し、色んな人が私の前に現れ、そして通り過ぎて行ったけど、どのシーンにも必ずねずは一緒にいた。


最期の日々は辛かった。結局、大嫌いな動物病院の救急処置室で、私の目も、手も、気配も届かない場所で、大嫌いな人たちに触られながら死んでいった。ずっと一緒にいたのに最期だけそれができなかった。今でも辛い。まるで昨日のことのように辛い。十歳だった。飼い猫としてはそれほど長生きでもない。私が自分の手で作った初めての家族で、一番長く一緒に過ごした家族だった。


昨年、父が死んだ。ねずが死んだとき、唯一私のことを慰めることのできる人だった。人生のあらゆる辛さを知っている人。その人ももういない。