感受性の衰え(1)

大学に入ってから日本各地を色々と旅行するようになり、なんでもない道筋や線路や街並が、非日常の感覚と相まってとても新鮮に目に映り、感動と共に幾分美化されて記憶に蓄積されたものです。ところが最近、まだ10代20代だった頃のような「初めて感」が全く失われたように思います。単に経験を積み、見聞を広めて、今更珍しいと感じる風物そのものが少ないのも原因としてありますが、それ以上に感性そのものがどうも衰えていると実感します。瞬間感動しても、それが記憶に残ることがまず無い。それというのは別に歳を重ねる上でのいわゆる老人力=ポジティブに忘れる、という処世の本能というか当然獲得されるべき経験値だと思いますが、それは社会人として真っ当に、いわゆる普通に生きるための、真人間としての能力であって、いささかなりともクリエイティブなジャンルに関わりたい私にとっては、私の中のアートの死といえるもう絶体絶命な感覚だと思っているのです(私の中にアート!おほほ!あるならばね!)。