芸の極み

ついに!私のかねてよりの憧れ、人類から生れ落ちた美という形容の具現、その名は美輪明宏様、ついに私はその舞台を目にすることができたのです!!
場所は県下、どころか日本でも有数のキャパを誇る大ホール。演目はご存知「毛皮のマリー」。去年は同じ場所で、ギエムを雲上かくあらんというはるか4階席から見下ろしたが、今回は3階席。やっぱり美輪様は小さなお豆くらい。でもその存在感は圧巻の一言。ちゃんとしたお芝居なんて、小学校の体育館にやってきた劇団うりんこ以来だけど(ちゃんとしてるか?)、大ホール3階で見るお芝居ははっきり言ってせりふなんて反響と肉声のボリュームで全然聞こえん。全神経を舞台上のお豆たちの、判別もつかない口元に集中して聞き取ろうとするが、遅れて入ってきたジジイの荒い息使いや、後ろの席のババアが飴をガサガサ取り出す音量に全てかき消されてしまう。大ホール中に満たされたスピリチュアルなお香の香りの演出、開演を告げる荘厳なチャイム、洗練された異世界へ誘う演出を台無しにするこいつら全員死刑よ!にしてもそういった万難を排しホールの音響に慣れてきた後半、美輪様の独演が続く場面はゲイのもとい芸の極み。そこにあるのはただマリーという老いさらばえた醜女の鬼気迫る独白、芝居なのかマリーなのか分からなくなるほどの世界観。これがあの美輪明宏か!お能は見たことないけど、幽玄とはこのこと?てなもんで、日本国民として伝統芸能を嗜んだかのような充足感のある、夢のような一夜でした。