富士山


退屈だのつまらんだの初心者用だの言われてるけど、やっぱり日本人ですし登っておかねばなりません、富士山。
とにかくテレビでお馴染みなあの混雑っぷりに恐れをなし、検討の余地もなく御殿場ルートを選ぶ。正確なデータかどうかは知らないけど、富士登山者の中で御殿場ルートを選ぶ人は、全体の3%だとか。確かに人は少なかった。登山者よりも、自衛隊員かと思われる駅伝練習の集団の方がはるかに多かった。




御殿場インターを下り、一路御殿場口に向かう。久しぶりに走った東名高速、やっぱりトラックの数が多くて恐い……。車窓から臨むのは正面に富士山、看板は「銘菓田子の月」に「静岡銀行」、車のナンバーは「富士山」、おお……。静岡感を味わう。



9:30御殿場口を出発。駐車場は何面もあり、車が停まってるのは登山口前の一面だけ。その駐車場でもまだまだ余裕がある。とてもハイシーズンとは思えない。やっぱり御殿場口で正解。



火山灰の砂礫の上を歩く。足がめり込んで、動かしても動かしても、ちっとも進んでる感じがしない。いきなり退屈になり始める。



この日の天気予報は「曇り夕方に一時雨、不安定な大気」。展望はない。左手に見るこの双子山も、いつまで経っても通り過ぎない。ルームランナーで歩いてるみたい。



高度を上げていくと更に展望は無くなる。5合目あたりを過ぎると雲に突っ込み、前後に歩いている人の姿も見えなくなる。ザッザッと砂を踏みしめる音だけが聞こえ、居眠りしそうになる。



たま〜に風が吹いて雲が切れ、一瞬青空が覗くこともあるけど、あっという間にまた白いガスに閉ざされる。退屈。



ザッザッ……



14:00、まだ六合目って……。
ここまで来る途中、真っ白なガスの中でコンビニ弁当を食べた。休憩ができるっぽい場所があるわけじゃないので、道の端っこで食べた。ほとんど人が通らないので特に問題なかった。ご飯も食べちゃったし、まだ6合目だし、そろそろ集中力が限界を迎え始める。



14:40、3000m地点。もともと遅いペースが更にがくんと落ち、より一層前進しない。



ようやく着いた一軒目の山小屋横にあったブルドーザー。これで物資を運び上げている。私も運び上げて欲しい。



立ち寄ったどの小屋にも設置されていたバイオトイレ。なんてキレイなんでしょう。さすが人の集まる山はデラックスさが違う。
横にスイッチが付いており、使用後にスイッチオンすると、トイレ内のおが屑みたいなものがグルグル撹拌される仕組み。



本日の宿泊地、7合9勺の赤岩八号館に近付くと、道に岩が増えてくる。そして赤岩八号館は富士宮ルートとも交わる地点にあるので、人の数もぐっと増える。

さて、この日の夜、大して飲みたくもないのにビールを飲み、飲んでる間から既に頭がガンガン痛くなる。この赤岩八号館、標高にして3200m。私が上ったことのある最高峰は御嶽の剣ヶ峰3000mちょいくらいなので、未知の標高ってことになる。この程度の高さで高度障害とか言ってる人は意味分からんわと嘲笑してきた私は、どうもその障害が出てしまったらしい。笑ってくれ。
そして深夜、同行のかっちーが冷や汗とともに泣き言を漏らす。かっちーも心臓バクバクで不調を訴え、私も気分悪いし治りそうもないから、夜明けとともに下りることを決断。ぶっちゃけ自分じゃ帰りたいとか言い出せなかったので、無理とか言ってくれて超ラッキー!てなもんだった。
ところがかっちーのやつ朝起きたら、気分がよくなったからやっぱり頂上行こうとか言いやがる。もうテンションゼロの私は下りることしか考えてなかったし、朝食も食べられないほど吐き気が酷くなっていたので、結果私の体調が悪いから下山する、みたいな格好になってしまった。なんだよ!



まあそんな感じで下山開始。この日も曇りでご来光は見えなかったらしい。大砂走は結構疲れるが、猛スピードで下山可能。あっという間に駐車場に着く。

しかしこの俗にいう高山病、「高度を下げたら直ちに治る」わけではなく、何時間かは頭痛と吐き気が続いた。おのれ富士山……侮ったわ。

そうそう、この赤岩八号館、とても感じ良い山小屋だったよ。来年もまたこのルートで挑戦しよう。