『舞工房』コンテンポラリー公演


コンテ集団『舞工房』公演のマチネを観に行ってきた。演者の中に、名古屋ではそこそこ名の知れたバレエ教室主催の金澤志保さんがいたからか、開場を待つ行列の結構な人数がお団子バレエ少女。うわっ子供かよ、と胸騒ぎがよぎる。まあ結果それは的中したわけだけど、舞台空間の雰囲気を作る重要な要素が客席であることはかねがね語ってきた。そしてこの名古屋という土地柄は、舞台を前にすると通夜のように押し黙って無反応になる特色がある。ましてや先生が出るから見に来ました〜みたいな子供ばっかりの客席なんて想像するに恐ろしい。まあおひとり様で見に行って、うっすい反応しかできない自分にも罪はあるのだが、案の定演者の「ここ笑うところだから!」という分かりやすいタイミングでも、埃一つ動かない会場。静まり返る客席。舞台に立つ友人が不憫で、わたしゃ泣きそうだった。名古屋の文化レベルは相変わらず最低。

前置きが長くなったけど、公演自体は面白かった。全8作品はそれぞれコンパクトにまとまり、長くもなく、飽きさせない。

1.「あのひと」はダンサー二人の作品。うち一人は私の友人。私のモットーは友人の作品に関しては絶対に評論家みたいな批判的意見は述べないことである。鑑賞者の口に戸は立てられず、アーティストである限りは時には評論家然としたシロウトから口さがない批判に晒されることもある(とか評論家然としたシロウトの私が言ってみる)。そういうのを聞いとくのもアーティストの宿命ではあるが、それは友が言うべきではないと考える。私はアメリカ人審査員のように、良い点だけを探し、そこだけを強調し褒める。批評を求められない限り、友人は無条件に褒める。そして今回の「あのひと」もすっごい良かった。二人の女性ダンサーが練り上げていくダンスは、私のイメージするスタンダードなコンテ。傷付けあいながらも関わっていく二人の心象が交錯する。

2.「Sacrifice」は舞台上に首のないマネキンと鎖が配置されている。道具としてはありがちで観念的。ダンサーの動きにキレはあるものの、見たことあるなー感が強い。

3.「アネモネ」は女性ダンサー三人による。ダンサーというのは肉体で表現するというその性質上、どんなに情緒表現が素晴らしかろうとも、美しい肉体の持つビジュアルの説得力には勝てない部分がある。三人のうち一人は、相当クラシックの覚えもあるであろうダンサーで、テクニックがまず目を惹く。そして鑑賞に堪える肉体をしている。申し訳ないが太って見えるダンサーは、例えそれが味わいだと言われるフラメンコやベリーダンスだとしても、私には鑑賞する価値を見出せない。太いダンサーがいたのは私にとって残念な点だった。ただ表現したいものが簡潔に分かりやすく、面白いダンスだった。

4.「(Persona)lity」は男性のソロ。舞台上には白い仮面が配され、後半は男性がそれを顔に付けて明るく舞い踊る。黒い半袖Tシャツに黒いパンツ、そして白い仮面の既視感が強すぎ、もはやそんなコンテは古典だと思う。更に言えば少ない舞台装置で踊るには身体ができていなさすぎる。要するに太い。それじゃだめ。

5.「Washerwoman」は少なめに見積もってもR45の演者さんたちで構成された演目。ダンスではなくほぼ演技なので、演劇としてほほほ、と微笑ましく見る。が、凍り付いてる会場。ああ可哀そう。

6.「KITCHEN」は料理やそれにまつわる日常を題材とした3本立てのダンス。ダンサーの人数が多いのでそれだけで飽きさせない。個別の質の問題は量でなんとかできるという好例、いや褒めてるんです。これも踊りの途中で喋り出します。が、凍り付いてる会場。ああ可哀そう。面白かったのに。

7.「Mysterium-length 6'44”」はサックスのソロ。録音の音源に合わせての演奏だけど、なんかよく解んない。動きが少ないから、せめてピアノみたいなパフォーマンス性に優れた楽器があれば良かったのでは。別にサックスいなくても、全部録音でいいんじゃない?とか思ってしまった。あと二分短くしてほしい。

そしてラスト、8.「SOSEKI-無人島の天子」は満を持しての金澤さん登場、バレエっ子たちはワア先生っとか思ったんでしょうか、凍り付いた会場からは全く何の意志も感じませんでしたが。水をかぶり、粉を撒くアクションももはや古典的手法。好みの問題だけど、やはり私は装置(あるいは設定)に頼らない、鍛え上げた肉体の織り成すダンスを見たい。

さて悲喜こもごものコンテ公演、ごちゃごちゃ書きましたが総じて面白いと感じたのは前述のとおり。あとコンテの宿命とも言える、「終わりがどこか分かんない問題」が今回も噴出、演技は終わったっぽいけど、拍手すべきか?の沈黙が辛い。

ゲリラ豪雨の中家路につきながら、ソワレを観に行くというバレエの友人三人に「会場の空気を作ってくれたまえ」と伝令。笑い上戸三人の彼女たちならきっと場を盛り上げてくれただろう…と期待。