戦争とは人間性の崩壊である。


元祖帝国主義ファミリーの困った次男坊・ヘンリー君が、自らも参戦したアフガニスタンでの従軍経験を振り返り「楽しいよ。僕はプレイステーションXboxで遊ぶのが大好きな人間だから。僕のこの親指がすごく役に立っていると思いたいね」と語ったニュースが衝撃をもって日本中を駆け抜けたわけですが。

まあ多くの人が一番引っかかっただろうことは、ゲームのように人を殺したことをジョークっぽく話しちゃうその人間性。このヘンリー君の感覚を非難したくなるのが人として当然のように思うのだけど、そもそも戦争に行った人間の人間性とはなんなのか。それは人類有史以来考え続けられてきた普遍的なテーマではなかったか。そもそも、人間性のある人々が戦争で正常な人間性を保てるものなのか。というか「正常な」人間性なんてあるのか。

軍隊を持つ以上、想定し得る最悪の事態は「戦争をする」という事なのだろう。ただ(民主国家における)軍隊とは戦争を目的としている組織ではなくて、戦争というリスクに備えるための組織であると思う。それはイギリス人で軍人で、しかも帝国ロイヤルファミリーのヘンリー君をもってしても、「本質的に英軍は抑止力」と言わしめる。逆に戦争を回避するために、軍備を放棄すれば戦争に巻き込まれずに済むかと言えば違うだろう。いつでも最悪の事態に備え、リスクヘッジするために何らかの組織を持つっていうのは国としては当然のことで、日本に警察や、消防や、海上保安庁や、山岳警備隊があるように、軍隊があるのも当然だろう(自衛隊も事実上軍隊)。警察を無くしたからって泥棒はいなくならない。軍隊を無くしたからって、隣国の打ち上げた「人工衛星」が一直線に日本に墜落したり、爆弾抱えたテロリストが原発に立てこもるリスクは消せない。

この度起こった、アルジェリアでのテロ掃討作戦。日本人も亡くなった。そして日本では正確に伝わらないだけで、他にも各国、多数の犠牲者がいるのだろう。例えば日本であんな事態が起こったとき、もし軍隊がいなかったらと思うと恐い。縮小一方だった日本の軍備再強化は戦争への道と、ステレオタイプに断じることはできない。中国や北朝鮮やロシアと戦争することはなくても、テロリストが隣の太郎くんや花子さん、チンさんカンさんジェームズくん、あるいは私に爆弾巻きつける脅威は実際に有り得る。

さて帝国主義でアジア中を植民地化し、現地人に凌辱の限りを尽くした栄光の大英帝国、の困ったロイヤル次男坊ヘンリー君。そんな出自の彼が、異教徒でテロリストの敵をゲームのようにピピピと照準を合わせ、親指でボタンを押すワンタッチ操作でぶっ飛ばしたとしても、大した罪悪感を持たないことに不思議じゃないような気もする。そもそも戦争で罪悪感を持ったら、もう余生を正常に生きていけないんじゃないかな。つまり、お互いにどんな大義名分を振りかざそうと、全ての戦争は人間性の崩壊。戦争に行ったヘンリー君みたいな発言をしたくなければ、戦争の無い世界を求めるしかない。人類誕生以来一度も達成できたことのない願いだけど、願い続けることは大切なことだ。ヘンリーの発言は不思議ではないけど、不快ではある。





ヘンリー王子がアフガン任務終了、「タリバン戦闘員を殺した」
AFP=時事 1月22日(火)9時58分配信

【AFP=時事】攻撃ヘリコプターの乗員としてアフガニスタンに派遣されていた英国のヘンリー王子(Prince Harry、28)が任務を終え、21日にインタビューが公開された。ヘンリー王子は派遣中に同国の旧支配勢力タリバン(Taliban)の戦闘員を殺したと語った。


 ヘンリー王子は同国南部ヘルマンド(Helmand)州での20週間にわたった任務で、アパッチ(Apache攻撃ヘリに搭乗して多数の任務をこなした。

 インタビューで王子は、イスラム過激派は「打ち負かされた」と述べたほか、テントや輸送コンテナの中で寝起きした体験など、広大なバスティオン基地(Camp Bastion)での日々について語った。

 英国内通信社プレス・アソシエーション(Press Association)の記者が投げ掛けた、ヘリから人を殺したことがあるかとの質問に対しては「ああ、他のたくさんの人も(同じことをした)」と答えた。「命を守るために命を奪う。そういう考えを軸に僕たちは活動していると思う」。「必要な時には撃つ…けど、本質的に英軍は抑止力以外の何物でもない」

 アフガニスタンでの従軍中、ヘンリー王子は3度にわたり記者らのインタビューに応じていたが、王子が戦場から離れるまで公開しないという取り決めが交わされていた。

 王子はタリバンとの接近戦を行った部隊の支援や、英米のヘリ部隊と共に負傷兵の輸送任務を行った。アパッチ攻撃ヘリ副操縦士だった王子は武器システムを担当し、ヘルファイア(Hellfire)空対地ミサイルやロケット弾、30ミリ機関砲を発射した。

「楽しいよ。僕はプレイステーションPlayStation)やXboxで遊ぶのが大好きな人間だから。僕のこの親指がすごく役に立っていると思いたいね」

 ヘンリー王子はヘリの操縦訓練を受ける前の2007〜08年にもアフガニスタンに派遣され、10週間にわたってタリバンに対する空爆の調整任務に就いたが、この時は報道規制が破られたため予定を切り上げて帰国していた。【翻訳編集】 AFPBB News