小秀山 二回目


梅雨入りしたというのに記録的少雨が続いていた昨今。雲はやや多いけど安定した天気図で、この日は山登りに良い感じだった。なのにかっちーはゴルフに行くとか言ってカチンときたので、一人で山に行くことにした。しかし私は1,000m以下の低山以外は単独で登ったことがない。やめたら?とか、もっと低い山にすれば?と言うかっちーを華麗に無視して小秀山へ行く準備を進める。

ああ、最初に書いておきますが、今回は途中リタイヤしました4649。

そもそもなぜ小秀かというと、前回小秀山に行ったときはあまり体調が芳しくなく、不本意な登山となったことが引っかかっていたから。あれから一年、ジムで少々筋トレを重ねた成果があるのかどうか試したかったこともあるし、様々な山行記を読むうちに単独の人は早いということがどうも分かってきた。果たしてそれは、単独だから早いのか。または早いから単独を好むのか。この際、そいつも自分への試練として検証してみようと。

こうして地獄へのカウントダウンは静かに始まったのである。


【行き方】
中央道中津川ICから257号線に入りひたすら加子母方面へ進んでいく。舞台峠付近に「加子母の杉」へと向かう標識が出ているので、右折して加子母の大杉へと向かう。生活道路をくねくね進んでいくとそれはそれは立派な杉がどーんと立っている。杉を右に見ながら通り過ぎ、ほんの数分進むと乙女渓谷キャンプ場に至る。2013年現在、キャンプ場までの道は工事中で、2キロくらいの区間は狭い林間の迂回路を通る。駐車スペースは20台分くらいある。万一そこがいっぱいになっても、キャンプ場の中にも車は停められそう。ただ有料っぽい。



6:30駐車場到着。とても車が多いけど、登山客だけではないかも。キャンプ場のお客さんもいる感じ。



二ノ谷登山道。前回と今回を比較してのタイムトライアルという設定をしたので、スタートから快調に飛ばす。体調はすこぶる良い。足も良く動く。何しろ今日はザックを小さくして普段持ってる荷物をほぼ置いてきたんですから(第一の悲劇)


ぶっとばして歩きながら、苦しくなってきたなーと思って心拍計を見ると175という有り得ない数字(家に帰って記録を見たらmax185までいっていた)。多分、同年代のいわゆるスポーツ心臓を持っている人が同じ強度の運動をしたら、この半分〜2/3くらいのはず。一般人レベルとしても異常に高い。相変わらず私の心肺機能は一向に改善していないことを知る。でもそんな私のひ弱体質は織り込み済み、こんなこともあろうかと両手ストックを持ってきたんですもの(第二の悲劇)



第一のチェックポイント、夫婦滝。登山口〜夫婦滝間は、
コースタイム……1:30
前回……1:29
今回……1:01

おおお!三十分も縮めるなんて私としては驚異!!これはいけるかもよ、と異常に疲れた身体で、異常に休憩を取りながら考える。しかし本当に辛いのはここから先の道なのである。我ながら遅い。これは遅すぎるとうっすら考え始める。心拍もなかなか下がらなくなってきて、序盤の飛ばし過ぎが露骨なほど体調に現れ始める。でも上に行くほど、時期を迎え咲き誇る美しいしゃくなげが目を慰めてくれる。(第三の悲劇)



このルート最大の難所、カモシカ渡り。気を引き締める。ストックもしまう……はずが、ザックが小さくてしまえない。仕方なく半分だけ突っ込んで、カモシカをよじ登り始める。



下から見上げ……



上から見下ろす。なんとか無事登れた。ここが終われば、もう難所はない。カモシカから三ノ谷ルート合流まであとわずか。でもザックに半分突っ込み、頭からニョッキリ突き出たストックが木に引っ掛かり、身体を持って行かれたりストックを落っことしたりしていたから、手に持って進むことにした。まだ少々岩場は残っているが、二本のストックを左手で掴み、最後の岩を登る。


そのときである。

・上部を見上げた途端、枝が目の前に突き出していた。
・同時にしゃくなげに群がってたクマバチがぶーんと顔に突っ込んできた。
・ギャーと慌てたら右足だけ滑落した。
・左手と左足かかとを支点に、岩に張り付いて垂直前後開脚になった。
・やっべー身体柔らかくてマジ自分グッジョブ!!
・なんとか体勢を立て直し岩をよじ登る


そこで初めて、左手の激痛に気付く。ストックを手に持って落ちた身体を支えたので、なんかやばいことになってしまったらしい。でも治る治る、と暗示をかけて進む。



ほらこの英文なんて翻訳サイト使ったんでしょ〜うける〜あはは……はは……は……



程なく第二のチェックポイント、三ノ谷との分岐点。
ちなみにここまでは
コースタイム……1:45
前回……1:26
今回……1:41
ああもう全然ダメになっちゃってる!!

さてここから一時間もすれば山頂。だけど指の痛みはジンジンと半端なくなってくる。骨、いったかも……とか、色々よぎる。しかし山野井妙子は18本指を失っても岩場を下ったではないか。小秀山を登るくらいなんでもないだろ。でも私に山野井妙子的な部分は一から百まで一つたりともないことを思い出す。骨は折れてなくても心がここでぼっきりと折れてしまう。もう登れない。私、もう無理。もう無理〜〜〜〜!わーーーー!!(富永一郎のマンガ風に)



そうと決まれば応急処置。関節が曲がると痛いので、小枝でなんちゃって副木。

荷を軽くしたために、いつも持ってるテーピングテープもガムテもない。あるのは絆創膏のみ。ここから先は樹林帯を抜け日が燦々と当たり暑いので余分に持ってきた水(樹林帯抜ける前に撤退)も、兜岩で食おうと思ってたおにぎり(兜岩直前で撤退)も、山頂で休憩がてら読もうと思ってたkindle(登頂前に撤退)も、全部無駄。無駄。ほんと無駄。重いだけ。

下りながら、私が娘に言うが如く、ほらやっぱり一人じゃ無理だったでしょ?といつものあの冷静な顔で言いやがるかっちーが脳裏によぎりほぞを噛む。悔しい……。できるもん私だって……

虫がブンブンすごい三ノ谷ルートを下山しつつ、絶対山中で食ってやる……と根性でおにぎりを食いながら歩く。立ち止まると頭が虫団子になっちゃうから。でもおにぎりと一緒に副木の小枝まで食ったりとか、何か色々と寂しい。

下山は
コースタイム……2:00
前回……記録なし
今回……2:09


燃費運転しないとすぐ燃料切れを起こすことが分かった有意義な山行であった。あと、早い人は単独だからじゃなくて、早いから早いの。あたりまえ〜



あ、小指は骨折してました。