9月も後半に入り、空も高く秋の気配が漂うようになった。
以前は夏が嫌いで、うだるような暑さの夏という季節は、異常に長い期間続いているような気がしていたのに、最近は夏もあっという間に過ぎてしまう。一年間という期間自体があっという間に過ぎるくらいだから無理も無い。
夏が短いと感じるようになってからは、この季節が好きになった。そしてなぜか夏というと「長崎」を連想するようになり、毎年夏になると一度も行ったことの無い長崎に行ってみたいと思う。夏=長崎と思うようになった理由は曖昧だけど、多分お盆が近くなると必ずニュースに出てくるとか、海(というか島)が多いとか、坂の多い町並みにより切り取られた小さな空の青さとか、さだまさしのあれの影響とか、どうでもいいことがイメージとして浸透しただけのことだと思う。


何より長崎には端島(軍艦島)がある。愛知県犬山市にある「博物館明治村」でなぜか軍艦島の精巧な模型とパネルが展示されていたのが、私が軍艦島を知るきっかけだった。一目でとりつかれた私はすぐさま軍艦島について調べ、そして辿りついたのが写真家、雜賀雄二さんの写真集「軍艦島 眠りのなかの覚醒」だった。軍艦島に興味のある人なら知らない人はいないだろうという、有名な写真集です。この写真集によって私は軍艦島への憧憬を刻み付けられ、いつかはこの目で見てみたいと思うようになったのは確かですが、必ずしも現在の軍艦島は眠りにつきながら自然に果てていく状態とは程遠いようです。イメージの世界を飛び出して現実を見ることが、果たしてそもそも軍艦島へ興味を持った根本の部分に良い影響を与えるのでしょうか…むしろ逆かもしれません。


さて幸運なことに雜賀さんとは一面識すらない私ですが、メールでやりとりをさせてもらい、その中で不思議な共通点がいくつかあることに気付きました。軍艦島というのはもちろんですが、そもそも私が軍艦島を知るきっかけとなったのは明治時代というものに深く興味があり、年に何度も明治村に行っていたからですが、雜賀さんは「明治研究家」でもあるそうです。確かに雜賀さんは明治〜大正期に作られた秀逸な天主堂をモチーフとした写真も数多く撮っているので、明治への造詣が深いことは当然でしょう。意外なのは椅子に興味があるということまで同じだったことです。雜賀さんと興味のベクトルがどうやら同じ方向を向いている私は、どの話も興味深く為になっています。雜賀さんはサイトに椅子に関するトピックもいくつか書いておられるので、興味がある方は是非ご覧になってください。


今年も夏が終わり、長崎には行けなかった。
でも冬には冬で、行きたいところがある。夢は尽きないのです。