今の家に住んで4年ほど経つが、入居前に不動産屋と見に来たときに、大きな蜂の巣がいくつも玄関の庇の上にあったので(冬だったから蜂自体は入居者無し)、巣の残骸があると次の年もやってくるし、何はともあれそいつを取っ払ってくれと頼んだ。その年の夏、不動産屋の努力むなしく同じ場所に巣を作られて、玄関を出入りするのも一苦労だった。それ以来、毎年違う場所に巣を作られる。ある年はポストの裏に作られ、手紙を出そうとしたら蜂も一緒についてきて、そこらじゅうに手紙を投げ捨てて逃げ回った。ある年は台風が来ていたので、部屋の中から雨戸を閉めようと引っ張り出したら、蜂のびっしりへばりついている巣が目の前に現れ、恐怖に凍りついた。今年も夏が来る。毎年の事なので外に出る前は細くドアを開け、やつらがいないか確認する。やつらの来そうなポイントを毎日注意していると、だんだん私も蜂の気持ちになり、この辺なんかいい巣ができそうだと分かってくる。案の定「いい場所」にひときわ大きな女王蜂が陣取っていたので、殺虫剤で逝って頂いた。今年1つ目。その後、外をふと見るとまたでかい蜂がウロウロしている光景をよく見かけたので、緊張感が高まるさなか、今日ドアを開けてすぐ頭上にある玄関灯にまだ小さい作りかけの巣を発見、私を甘く見てもらっては困る。親分を殺れなかったのは無念だが、ひとまず帰る家を粉砕して側溝に捨てた。どうも私の家のある並びに白い外壁の家はウチしかないので、やつらに狙われているような気がする。夏になって近所の人が私のように玄関先をバタバタ逃げ回ったり、殺虫剤片手にうろついているところなど見たことがない。


と、蜂にとってはいわれなき虐殺を続ける冷徹な私だが、今日は夫の事務所の掃除をして、一年ぶりくらいに窓を覆ったスクリーンを上げ、さらに窓を開けるとスズメのひなの鳴き声がすぐ目の前でする。スズメはツバメみたいに見えるところにお皿みたいな巣を作るわけじゃないので、どうも見えない隙間に巣を作っているらしい。エアコンの室外機などで手が入る隙間すらないが、その隙間を片目をつぶってのぞきこむと、小さなヒナが死んでいた。もう死んで随分経つようで、よく見なければそれが元生き物とは思えないものになっていた。かわいそうに・・・この窓を開ける習慣があれば、よく鳴くヒナの声に気付いたはずだ。助けてあげられたかもしれない。巣からこぼれおちて戻れなくなってしまったのだろう。蜂の巣を叩き落してモップで潰しドブに捨て、死にかけてる蜂を追い詰め、致死量遥か上回る殺虫剤を憎憎しげにかけ続ける私はスズメがかわいそうで泣いた。
と、親スズメが帰ってきて、私を見るなり激しく怒りだすし、気配を感じて振り返ると事務所で飼ってるネコが悪そうな顔でそろ〜っと近寄ってきていたので、もう忘れようと窓を閉める。私の周りは巣だらけ。