港へ・2

もう1年以上前の日記に書いたのと同じルートを辿って、再び目指すは名古屋港、の水族館。初めて見たイルカショーではなんか見慣れぬ、愛くるしい生物が巨体を波打たせ、数メートルも水中から飛び上がり、激しい水しぶきを上げてジャプーン!ザバーン!とやってる姿が、ただ単純に圧倒的で思わず涙する。
水族館をそれなりに堪能した話は大して面白くも無いので割愛するが、前回港へ来たときは晩秋の霧雨に浮かび上がる夜の倉庫群に心動かされた。それに対し今日は晴れ上がった土曜日の午前中で、青く硬い果実のように成熟しきらぬ初春の香気をおずおずと漂わせているものの、まだ風は肌を刺す冷たさで、冬の冴えた空気に春の光が降り注ぐ、この時期ならではの不思議な雰囲気が辺りを包んでいた。最近、ノスタルジックな風景を脳裏に思い描くだけで身を震わすほどの多幸感に包まれ、忌まわの際にもこの感覚であの世へ行けるなら、さして恐れることもないだろうに、とすら思われる感覚に見舞われることがよくある。ガイガーカウンターみたいな簡易ドーパミン測定器があったらきっと針が振り切れるんじゃないかしら。薬物もトルエンもアンパンも酒も煙草も無しでこれを感じるとは、頭がお花畑ってこの状態?キュフ!それはそうと、今日も運転しながら港へ近づくに従い、あたりの風景にこの感覚が呼び覚まされる。以前に比べ、私の感覚を刺激する風景と言うものが確実に変わった。今日のそれも、ほんの数年前まではむしろ敢えて避けるような、興味もそそられぬ不愉快なものとまで思っていたのに。例えて言うならば昔は大嫌いだったもの・・・それは夏休み中の朝6時。土曜日の午前中。工業地帯。雨の日。夏。今はどれも愛して止まない。土曜日の午前中、出勤日だが休日進行なのか、それとも休日出勤なのか、開け放たれた倉庫に動く人たちもどこかのんびりし、トラックもエンジンが切られその巨体を静かに休ませている。のどかなる春の一日。