『むかし僕が死んだ家』


東野圭吾という人はよく見る名前だけど読んだことはなかった。「登場人物は二人だけのミステリー」の帯に惹かれて買ったものの、まあ結果期待はずれだった。タッチは赤川次郎とかそんな感じで軽く、リアリティがいまひとつ。内容は幼少時の記憶がない女がそれを取り戻すため、男と一緒に自分に縁のある古びた洋館を訪れ、そこにちりばめられた小道具の数々で少しずつ記憶が戻ってくる様を描く一幕劇。ただその主要な小道具ってのが日記帳だったりするので、全編通してありがち〜な感がぬぐえず、それに冒頭で女がいきなり自分の子供を虐待しており、その原因が自分の失われた子供の頃の記憶にあるに違いない、つまり自分も虐待されていたのだ・・・とぶっちゃけてしまってるので結末も予想ができるし案の定その通りの結末だし、電気もないトイレもない鬱蒼とした山奥の不気味な洋館で、「間違いがあるといけない」ってんで別々の階で寝る二人の設定、そんなん絶対あり得ない。普通怖いでしょうよ。洋館の一夜、となると思いきや、やたら洋館から出たり入ったり車で出かけたり自由だし、一夜明けちゃって問題解決までに昼までかかってるし、こう、なんか間延びした感じで時折緊張感が失われる。殆どの小説がそうであるようにこれもまた、ただ読んだ、って感じの本でした。