デジャヴ


正確には既視感という漠然としたものじゃなくて、そのシーンを覚えていた。夢の中で冷蔵庫を開けて、適当にあった材料で晩ご飯を作り、バレエに出かけた。今日仕事から帰ると、冷蔵庫を開けて、夢の中と同じ食材で、、、というより冷蔵庫の中身を覚えてたから夢に出てきたんだろうけど、夢の中と同じ料理を作り、バレエに出かけた。
夢の中でバレエの帰りに人と会い、その人と話し、答えを待った。隙のない口元をじっと見つめた。でもその夢の事は忘れていた。今日バレエの帰りに夢で会ったその人に会い、大した話はしなかったが、同じく答えを出す口元をじっと見つめた。そこでようやく夢を思い出した。夢ではその答えを聞くと同時に、幕がストンと落ちたか、場面が転換したか、とにかく続きは無かった。夢と同じ答えは言わないで欲しいと、見つめた口元からは残念ながら同じ答えが出てきた。料理同様、そう言うことを予想していたから夢に出てきたのだ。別段予知夢というわけでもない。ただそこで夢のようにストンと現実が切れて途絶えることは無く、時間は連続していた。ひどく大泣きしたいような、大声で自分を嘲り笑いたいような奇妙な気分になり、自分に対して酷く失望した。これは昨日今日見た夢の出来事だったか?それより以前に、実際あった同じ出来事のデジャヴではなかったか。自分も含め役者が変わっただけで、私はこの物語の結末を既に見ているのではなかったか。