夏が来るよ


風の中に夏の気配がする。もうずっと、私は駆け抜けていなかった、そうなぜなら去年の夏以来、夏じゃなかったから!夏が来た!夏が来たよ!田に植えられたばかりの小さな苗をなでる夏の気配を十分に含んだ風、紫陽花の色を刻々変化させ潤わせる霧雨、夏が来る。照りつける日差しの中、その日の到来を告げる花火大会の空砲、賑わいに様相を変える見慣れた町、熱気の残る夜空に咲き誇る花、そしてもう明日など来ないかのように寂寥感が支配する祭りの後の踏みしめられた道、夏が来る。全身を伝う汗、歩くだけで切れる息、唐突にバケツをひっくり返したような雨が降り、間近に落ちる稲光におののきつつも、美しくかすむ風景、身体を打つ激しい雨粒、ああ夏が来る、夏が来る。夏が来るよ!