木曽駒ケ岳(記念すべき一座目/百) 一回目 1/3



↑駒ケ岳山頂にて。

去る8月23日、木曽駒ケ岳へ行ってきた。山の恐ろしさを骨身にしみて感じた一日だった。まだたった一週間しか経っていないとは信じられないほど、遠い過去のことに感じる。それどころか、心身共に衰弱しきってようやく下山した瞬間に、山で起きたこと全てを忘れるほど、あまりに下界と山とは乖離しきった夢の中のような出来事だった。
朝4:30、名古屋近郊の自宅を出発。既に小雨が降っていた。夏山のシーズンは7月・8月の2ヶ月、この日を逃しては山には行けないと、雨天決行する。春日井IC〜駒ヶ根ICの道のりは約1時間半、車の数は少なかった。駒ケ岳へは自家用車での乗り入れができないので、ふもとで車を停めバスを待つ。7:30を過ぎていたが、バスを待っているお客さんは10人程度。これが好天に恵まれるとこの時間でも大行列になるらしい。このバス会社、確か伊那バスだったか、ここの運転手さんたちの研修はきっと相当なもんだと思う。ロープウェイの駅に行くまでの道中は、職人技としか言いようの無い超絶ドライビングテクニック。右へ左へとあるいは絶壁、あるいは断崖へ突っ込むかのようなハンドルさばきに生きた心地もしなかった。小一時間ほどでロープウェイしらび平駅に到着、フラフラしながらロープウェイに乗り込み、真っ白な山中へ吸い込まれるように進んでいく。人いきれで曇ったかに思えたガラスは、外の濃厚な霧によるもので、いくらこすっても景色は見えず、それどころかほんの数メートルの視界すらない。終点千畳敷駅にはものの数分で到着。降り立つと何しろ寒い。バス停には山頂の気温7度と書いてあったっけ。窓から見遣ると、見渡せるはずの絶景は全て雲に飲み込まれ、小ぶりの雨が降っていた。嗚呼、これが諦めの付くほどの大雨であったなら、その後の悲劇は回避されたかもしれない。
登山初心者2人によるパーティの私たちはここまで来たのに勿体無いと、天候が悪ければ引き返す、の鉄則も無視しレインウェアを着込み山頂を目指す。ここまでは気軽に乗り物で運ばれて来れたものの、そこは高山、元々体力に自信のない私はすぐに息が上がる。足元は滑りやすく、視界も悪く、時折強まる雨に何度も不安を感じたものの、下山パーティと何度もすれ違うと、まだこの上には行けるのだと、ひたすら足元だけを見て登り続けた。そして突然、乗越浄土という広い稜線に出た。写真によると晴れていれば絶景ポイントなはずだが、見渡す限り真っ白な壁。初めて訪れる高山の稜線の、しかもこんな悪天候の、台風中継か?という強風に恐怖がじわじわこみ上げる。もう絶対無理、この先に行くなんて無理無理、と諦めかけると風が収まり、じゃあもう少し進むか・・・と進み始めるとまたも身体がふらつくほどの強風、そして四方八方から叩きつけられる霧というか雨というか。乗越浄土の宝剣山荘(後に命を救われる!)をスルーし、さらに山頂を目指す。時に手をつかいよじ登り、中岳山頂を命からがら通過、一旦そこから少し下り、最後の登りで駒ケ岳山頂についに到達!!ここでやめときゃ良かった!(続く)