夏が来る


夜、車の中が蒸し暑いので窓を開けて走った。ほんの数日前はまだひんやりとしていた空気が今夜は生ぬるく、窓を開けても蒸し暑さは変わらなかった。昼まで降り続いた雨がほんの少し上がった今夜。

若い頃は寒いのも暑いのも嫌いで、不快を感じるとすぐ毒づいた。でも今は暑さも寒さも好きだ。人生とはかくも短い。私の人生も折り返しをとっくに過ぎたのだろうか。この季節を感じるのはあるいはあと数回か、もしかしたらこれが最後かもしれないと、いつも考えている。どの季節も涙が出るほど愛おしい。私のいなくなった後も続くこの自然の事を思う。切なく儚いこの世界。雨の匂いを漂わせ、蒸し暑い夜の風は夏を含んでいた。

夏が来る。