北海道へ・七日目


この日は北海道の上空を低気圧が二つ通過しており、前日からの雨が続いていた。このまま斜里で停滞し、温泉に入りつつ休養日としようと思っていたが、大変なことを思い出した。

羅臼岳の山バッジを買っていない。

そう、私は登った山のバッジを集めているのである。むしろ登ることより、バッジを買うことが目的だと言ってもいい。そのバッジを買い忘れた。一大事である。斜里から羅臼まで約70キロ。往復140キロ、なあんだご近所ではないか!←北海道を走るうちに培われた感覚



何のためらいもなく前日走った道を引き返す。写真中央にぼんやり霞むのが、この日登る予定だった斜里岳。手前の畑は茶色が小麦(だと思う)、緑がてんさい(だと思う)。



こちらも右奥が斜里岳、手前の畑で白い花をつけているのがジャガイモ(だと思う)。この辺りの広大な畑は、ほぼこの三つの作物が占めているようだった。



羅臼へ入る手前にある、オシンコシンの滝。こんなのが国道沿いにあり、車で走りながら見られるのである。



どうせこの日はやることもないので、車を下りて立ち寄る。雨が降ったので、前日より随分と水量が増えた気がする。



ここにも例の知床応援自販機。



そのまま羅臼岳の登山口へ向かう途中、ハザードを出した車が路肩にずらりと停まっている。狐や鹿が出るとよくある光景なので、また動物でも出たかな、と私も車を寄せて見てみると、なんとヒグマの親子だった!



路肩からわずか十数メートルのところを悠然と歩く母熊。仔熊は三頭もいて、ちょろちょろと走り回っている。



ときおり頭をもたげては様子を見ている仔熊。このあとすぐに、親子は藪の中へ戻っていった。



登山口の『ホテル地の涯』で無事バッジを購入し、このまま戻るのももったいないので、知床半島を進んでみることにした。途中から砂利道に変わった林道を進むと、今度は立派な牡鹿が道路脇を歩いている。



慌てて逃げるわけでもなく、車の前にも出てくる。そーっと避けて先を進む。



知床半島も花の季節のようで、土手に沿って白い花が咲き乱れている。



自家用車で入れる最終地点の、カムイワッカ湯の滝。その名のとおり、お湯が流れているらしい。



流れの中へ入ることもできるらしく、何人かが足を浸していた。監視員らしきオッサンが二人いたが、ほんの一分ほど写真を撮るために停車した私に、邪魔だからもっと奥へ停めろ、位置が悪いから停め直せ、ラインが違うから方向を揃えろ、とごちゃごちゃうるさく、何度もエンジンを切ったり点けたりさせられ、極めて気分を害したのでさっさと立ち去った。
まあ私がほんの少し立ち寄っただけなんてオッサンは知らないものね、私が長居するとでも思ったんでしょう、オッサンは駐車場を管理する者として、当然の仕事をしただけですものね、

なんて私は全然思いませんから。

ウザいものはウザい。ジジイウザい。



気分を取り直して知床五湖へ。無料で自由に散策できるのは一湖だけ。あとは自然保護と危険回避のために、人数制限を設けた有料のツアーでガイドと共に行くことができるらしい。確か数千円だったと思うが、そういう有料は大いに結構だと思う。



たまにパラリとするが、本降りにはならず持ちこたえていた。



とても綺麗。でも遊歩道の周りには電気柵が張り巡らされている。人間がこの景色を見るために、熊が痛い思いをする可能性があると思うと、自分のやっていることが愚かに思えて仕方がないのだが……まあそれを考え出すときりがないので、とりあえず考えないでおく。



前日に登った羅臼岳。風が強そう。



知床連山。右から羅臼、○○、△△、××、□□……とどこかのガイドさんが喋っているのをこっそり聞いていたが、羅臼以外全部忘れちゃった。



一湖と、水面に映る山。日本じゃないみたい。



散策を終えて駐車場に戻るとすっかり満車。日曜日だったからだろうか。聞こえてくる言語の半数以上は中国語だった。ここに限らず、北海道の観光地は中国人が非常に多いので特に驚きはしないけど。



せっかく知床まで戻ってきたので、海の幸を食す。海辺といったら海鮮丼。でも温かいご飯に冷たい刺身がどうも口に合わない。見た目は豪華で美味しそうなんだけど。



そして再び斜里に戻り、昨日と同じ店に入る。キツイ山の前日は飲まないようにしているんだけど、夜が更けるに従ってどんどん雨脚が強くなるので、半ば諦めて飲んじゃう。



漆黒ラーメンも食べちゃう。(ただの油っぽい醤油ラーメンだった)