北海道へ・十日目(最終日) 十勝岳(二十座目/百)


楽しかった北海道もこの日で終わり。最終日は十勝岳の登山と、登山後に函館まで約450キロの長距離運転が控えているので、早め早めに行動を……と思っていたのに、深夜2:20にセットしておいたアラームを消してしまって、起きたのは3:30。目玉ビョーンでいきなり一時間の遅刻。

あとから知ったことだが、望岳台登山口からの登山を目指し前夜泊をするなら白銀荘でも良いだろう。この十勝岳周辺には車中泊の強い味方である道の駅がなく、私は富良野の日の出公園とかなんとかいうところで一夜を過ごしたが、なんと夜間(18時以降?)にトイレが閉鎖されるという憂き目に遭い、登山口までかなり離れたそんなところで一泊する意味はあまりなかった。白銀荘も厳密には宿泊者用の駐車場かもしれないので確認は必要だが、テン場もトイレもあって、もちろん広い駐車場も完備。ここで泊まればよかったなあ。



4:15、望岳台登山口の駐車場に到着。車中泊組の車も合わせて十五台くらいはあっただろうか。



上下の二面あって結構停められる。前日に下見した際も売店はカーテンが閉ざされ、しばらく開かれた気配がなかったので、どうやら閉鎖されているっぽい。



4:20登山開始。と、ここで同じく早出のご夫婦に出会う。もしかしてと奥様の顔を見ると、やはり二日前に雌阿寒の温泉で一緒になった人だった。
私と同じ日に羅臼岳を登り、私と同じように斜里岳で停滞し、私はその次の日に諦めて雌阿寒登山に向かったが、このご夫婦はそのまま斜里岳登山口まで行ったという。結局斜里登山口は雨のため閉鎖されており、諦めて雌阿寒に移動してきたところで、下山してきた私と温泉で一緒になったという経緯。

私が「明日は旭岳に登り、明後日十勝に登って、その足で本土に帰ります」というと、その奥様も「私たちは明日雌阿寒、明後日は同じく十勝で、その足で茨城に帰ります」という。どちらも明後日十勝に登るということで、もしかしたらお会いできるかもしれませんね、と言って別れた人だった。
本当に会えるとはびっくり、お互い頑張りましょうと励まし合い登山開始。

七十代というご夫婦は私に先に行ってくれと言うが、かなりのベテランご夫婦の様子で、背中にプレッシャーを感じつつ先行する。



序盤はなだらかな道。ただ石がゴロゴロしていて歩きにくい。



5:20、十勝岳避難小屋。行きも帰りも寄らなかったけど、どこが入り口だったのかな?



小屋からわずかに進むと、「前十勝コース立入禁止」のロープが。1998年から噴煙のため閉鎖されているらしい。ここも活火山なのだ。



道を巻いて行くと、確かに前十勝方面で噴煙を噴き上げている場所があった。この辺りで私も喉が痛くなって鼻がヒリヒリしてきた。活火山である。



鞍部に向かう道は、ガレて急登。なかなか辛いが、展望の良さがそれを和らげてくれる。



急登の区間を登り終えると噴火口を間近に見る。



道の様子も一変し、黒い砂礫になる。



正面の尖った場所が目指す十勝岳。晴れていれば快適な山歩きだが、道幅の広いなだらかな登山道は、悪天候時に迷いやすいという。



すり鉢状に抉れている。



砂礫を踏み締めるたびショリショリする音を聞きながら、静かで気持ちの良い空中散歩が続く。



しばらく行くと残雪が現れる。



山頂は、この雪渓の真上。一体どうやって登るの?



と思っていたら、本当にこの、雪に抉られた崩壊地を進むらしい!



ちょっと怯んだが、実際に入ってみるとそれほど足場はもろくない。むしろ岩と岩が溶融して動かないので、下の岩場よりは登りやすい。



登りきると稜線に出て、もう山頂はすぐ。



7:35、登頂! もう最高にいい気分。
この写真を撮ってくれたおじさんは今日が初日で、明日はトムラウシに行くという。羨ましいので、明日からまた天気が悪くなるみたいですよ、と有料天気予報のとっておき情報を正直に教えてあげた。



なんと綺麗なんだろう。こういう風景を見ると、山に登ってよかったと思う。
山頂はそれほど広くないけど、人もまだ少ないのでおにぎりをのんびり頬張る。

十分ほどすると、例のご夫婦が登ってきたので健闘を称え合う。歩くのが遅いんですよと謙遜していたが、やはりかなりの健脚、のんびりしていては簡単に追い抜かれてしまっていただろう。大したご夫婦だ。

茨城在住というので、このあと私も茨城に立ち寄るんですよと言ったら、是非筑波山に登りなさいと勧められる。今回はその時間がとれないのだが、そうですね是非、と頷く。またどこかの山でお会いしましょう、と別れ下山を開始する。



荒涼たる風景は、どこか父の描いた絵にも似ている。
北海道の最終日に、素晴らしい景色を見ることができて良かった。



見下ろすと、十勝か、富良野か、とにかく平野。下山中はずっと、近くの自衛隊演習場からなのか、砲弾の音が断続的に響いていた。人間って……。



10:15、下山。駐車場周辺を観光客が散策していて、一気に現実へ引き戻される。
この日もコースタイムを一時間ほど短縮。いつも遅い原因は天気にあるのか?



のんびりしている暇はないので、駐車場で派手にバババと着替え、白銀荘でバッジを買い、富良野の有名店「くまげら」へ。



店の場所以外のリサーチは何もしていなかったので、メニューを見てもどうすればいいのか分からない。とりあえずこの「五郎カレー」をオーダーしてから待っていると、隣の観光客が「和牛ローストビーフ丼が名物ですぐ売り切れる」「カレーも名物で、中でもオムカレーが有名」などと話すのが漏れ聞こえる。オムカレーだったか〜! でも五郎カレーも美味しかったからいいや。

さてここからすぐに函館へ行くには何となく後ろ髪引かれ、多少の寄り道にはなるが幌尻岳の山容を見ながら帰ろうと、ナビをセットすると驚きの目的地まで500キロ! うーん名古屋東京間で350キロくらいだったと思うが。しかもこのクソナビはまた砂利道に導こうとするので、ひたすら反抗しながら進んでいく。



本土を走るようなストレスはなく、気分的にはあっという間の20:40、函館到着。富良野でカレー食べてから9時間経っている。とりあえず函館に来たからには寿司を食わねばと、フェリー乗り場近くの回転ずしに入ると、もう美味しいのこれが。函館の回転ずしのクオリティってすごすぎる。



お腹も満腹で、23:30発の青函フェリーに乗り込む。しかしこのフェリーがなんか色々とすごかった。『シャワーあり』と書いてあったので入ってみると、本当にシャワーしかない。コンクリートの上にスノコが置かれ、カーテンとシャワーのみ。でも下山してからお風呂に入ってないので、とにかく入る。シャンプーとか一時的に置く場所もないので全部コンクリの上。
更にこんな時間のフェリーは98%以上トラック野郎で、多分女で乗ってるのは私だけ。R40のババアながら少々身の危険を感じてしまった。

疲れているはずだけど、船内で眠れぬ時間を過ごしながら北海道を後にした。