御在所岳 三回目


某有名登山用品店にて、今シーズンから初めて雪山に入ってみようと思うと相談すると、色々アドバイスをくれながら道具を選んでくれた50がらみの店員さんがいた。やたらと初期投資が必要な雪山装備の中から、リーズナブルなものを必要最小限に選んでくれた良いおっさんだった。その登山用品店がやってる雪山講習の案内なんかも織り交ぜつつ、初心者でも大丈夫じゃないかと勧めてくれたのが御在所。夏のシーズンに二回登ってるし、知った山なら安心感もある。名古屋からも近いし。
なんて乗り気になっていると、「ぼくがこれまで食べたカレーうどんの中で、御在所のレストハウスカレーうどんが一番うまい」とおっさんの話はスイッチしていく。二位以下は忘れたが、とにかく御在所が一位だということは覚えた。土日だと一時間待ちもあるという幻の山頂カレーうどんや如何に。ていうかカレーうどんって微妙だよね。ラーメンと違っていくら旨くてもわざわざ行かない感じっつーか序列低いっつーか。


【行き方】
過去二回はどちらも中道登山道だったが、今回は裏道登山道を採る。東名阪四日市ICで下り、国道477号湯の山温泉方面へ。近鉄湯の山温泉駅前を通過し、「蒼滝公共パーキング」の看板が見える交差点で右折。湯の山ロッジ、旧湯の山水産センターを見ながら道なりに進むと左手に「蒼滝公共駐車場」がある。無料の蒼滝公共駐車場から一合目の看板まで徒歩十分ほど。ロープウェイの駐車場なら一合目までは至近だけど、駐車料金は一日千円。



6:30頃、駐車場に到着。駐車スペースが棚田状に三面くらい。全部で70台停められるという。しかし到着時点で車は私の一台だけ。突然不安に駆られる……



駐車場から階段を登っていく。



イマイチ登山口の場所を把握していないので、ウロウロと挙動不審に迷いながらロープウェイ乗り場を通り過ぎる。数えてないけど、車は何台か停まってたかなあ。



7:10、やっと入口発見。



少々進むと建造物。蒼滝茶屋、と地図にあるけどもちろん早朝にはやってない。



序盤は看板が多くて変に悩んでしまう。周りには誰もいないし……。



沢沿いに出た。私は海や川はもちろん、プールですら苦手な水嫌いなので、ずっと沢沿いを通る裏道登山道を本当は使いたくなかった。でもここが一番無難なルートだから仕方ない。何しろまだ雪山二回目なのだ。



小さな滝壺に轟々と音を立てて水が注ぎこむ。やだなあ……



日が高く昇ってきた。序盤のこのあたり、水に近くて滑りやすく、段差は結構大きくて意外と歩きにくい。



ゴーーー(やだなあ…。)



7:45、唐突に道が開けて登山ポストがある。もしかしてここまで車で来れたとか? ポストの後ろに停まってる車は登山者のものではなく放置車両っぽい。



この谷筋は、数年前の豪雨で土石流が発生して被害が出た場所。川に巨大な岩止めが建っている。



堤防の真ん中を通って進む。



8:00、七の渡し。



こんな雰囲気の橋を数回渡るので七の渡しってことだろうけど、七回はなかったなあ。



8:10、中道への分岐。



分岐を過ぎると、道にもたまに氷が出てくる。この日は暖かかったので、随分緩んでいて歩くのに支障はない。



更に進むといよいよ雪が。でも凍結はしていなかったので、気をつければアイゼンがなくても歩けた。



8:25、藤内小屋。土石流災害で流されてしまったが、ボランティアの尽力で再建を果たし現在は休日のみ営業とのこと。ここでアイゼンを装着。



広く開けた道を気分よく進む。



8:50、兎の耳。鎖場だけどそれほど危なくはない、夏なら。覚束ない私の技術では、雪のついてない岩をアイゼンで登るってのが恐かった。ストックは面倒がらず片付けた方が安全。



9:00、五合目。



五合目は藤内壁への分岐点。登山道じゃないところを歩いている先行者がいるなーとは思っていたんだけど、クライマーだった。二人してこっちを見ている……



正面のあんなの登るんだって、こえ〜



私はこっちの道。さすが、低山とはいえ三重県北部。雪が多くて難儀し始める。



天気は良いんだけど……



霞が出て、あまり遠望は利かない。さながら春の陽気で、半袖で登っていてちょうどいい。



10:10、急勾配の雪歩きにボヘボヘ喘ぎながら八合目の国見峠に到着。



二月までは樹氷が見られるって聞いたんだけどね……さすがにこの暖かさでは無理だった。



なだらかな稜線を歩いて10:35、中道との合流地点。すぐ先にはロープウェイ駅があり、いきなり観光客の中に放り出される。なんだよその凶器は、と足元を怪訝に見られるのですぐアイゼンを外す。
八合目からのこの区間はそれほど勾配も急ではなく展望も良いので、軽アイゼンで雪歩きしている人が結構いるっぽい。すれ違った人たちも皆六本、雪に残されてた足跡も六本が多かった。



さて今日の最終目的地、山上レストランアゼリア。食事は10:30からとのことで、10:40に入った私はちょうどいいタイミング。そんな早くから食事してる人も誰もいない。この日ばかりは足の遅さが吉と出た。



迷わず注文、カレーうどん900円。他にカレーラーメンなどもあった。センターに厚切りで柔らかい豚肉がど〜んと乗っていて、うどんは伊勢うどん。ふなふなと柔らかい麺には鰹節がまぶさっている。汁を残さず食べきれるカレーの量も合理的。なるほど美味しいカレーうどんだった。次はカレーラーメンにしてみよう。



カレーうどんは食っちゃったしアイゼン脱いじゃったしあらゆる意味で気持ちが途切れたので、ロープウェイで帰ることにした。浮いた時間で温泉入ろうと思ったが、大して歩いてないからそんなに温泉も行きたくない(行ったけど)。



四時間かけて登った道を12分で下り、さっき食べたカレーうどんの満腹感もそのままに下山。いや〜時間って金で買えるね。なんてホクホクしながら車に戻るとなんだこの惨状は。出発時にはなかった鳥のフンが、ミラーに屋根に窓ガラスにまき散らされている。ガラスには攻撃痕も無数に残され、鳥の憎しみが非常に伝わってくる。



後片付けを済ませ、車の中で待ち伏せしていると犯人が再び現れた。



車内で早速画像検索、犯人の名は「キセキレイ」だった。縄張り意識が強く、車に映った自分の姿を他のセキレイと思い攻撃する、とのこと。かわい〜〜い。おこりんぼちゃ〜〜ん。


さて帰り道は「アクアイグニス」で温泉、600円。平日の昼間から風呂入ってる人の多いこと。どういう人たちなんだろうねえ? 最初から疲れてもいなかったので、人の多い温泉でわざわざ疲れて帰ってきた感じ。やっぱり下山も自分でやらないと達成感が違うね。